幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 フード付きの上着を着て、シドの背中に乗せてもらう。こっそり屋敷を忍び出て向かった堤防で、リーゼは息をのんでしまった。
 そこは、今にも水が溢れそうだった。そして、まだ強化が終わっていない部分が、決壊しそうになっている。

「大変! このままじゃ崩れちゃう――かたくなぁれ!」

 今にも、崩れてしまいそうになっている場所を見つけ、リーゼはそこに手を当てた。体内の魔力を流し込む。これでこの部分の応急処置は完了だ。

「シド、あっち!」
「わかった!」

 リーゼの足で走るより、シドに乗せてもらった方が速い。決壊しそうな個所の応急処置が終わるなり、シドの背中によじ登る。
 雨は激しく降り続け、リーゼの服はずぶぬれになっていく。

「かたくなぁれ! ――よし、シド、次!」
「任せろ!」

 リーゼに固めることができるのは、ベッド一台分の広さ。
 ――それでも、何もしないでいるよりはきっとましなはずだ。
 ふと気が付くと、頬を濡らす雨は、差し出された傘によって遮られていた。濡れた髪がタオルで優しく拭われる。

「リーゼお嬢様、お出かけになるのなら一声かけてください」
「ごめん、アルダリオンはとめると思って」
「もちろん、とめたとは思いますが――このお茶を飲んで、一度身体を温めてください」

< 111 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop