幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 屋敷で一緒に暮らすようになったばかりだというのに、アルダリオンはリーゼの願いをしっかりと理解しているようだ。彼が差し出した薬草茶を飲むと、身体の内側からポカポカとしてくる。

「大変だ、北の方が決壊しそうだぞ!」

 そう叫ぶ声が聞こえてきて、リーゼは跳ねるようにして立ち上がった。今にも決壊しそうな場所があるのなら、まずはそこを固めた方がいい。

「シド! 乗せて!」
「任せろ主!」

 そうして、リーゼは雨の中、ひたすら堤防の補強を続ける。

(……魔力、もつかなぁ)

 リーゼは膨大な魔力を持ってはいるが、これだけ続けてスキルを発動したことはない。堤防が破れそうだという声を聞くたびに、その場に駆けつけ、応急処置を施す。
 魔力が尽きるまで、リーゼは堤防を離れようとはしなかった。
 

 * * * * *



「かたくなぁれ! かたくなぁれ!」

 雨の中、必死に堤防に硬化の術をかけ続ける少女の姿を見ながら、アルダリオンはため息をついた。

「いつまで続けますか。リーゼお嬢様」
「魔力が限界を迎えるまで。昨日のうちに、もうちょっと頑張っておけばよかった――かたくなぁれ!」

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