幼女で領主で聖女様！？名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる！

「そろそろお嬢様の魔力が尽きてしまいそうです。屋敷に戻って、お風呂に入りましょう」
「リーゼまだ大丈夫だよ――かたくなぁれ！」

　アルダリオンの言葉には首を横に振り、リーゼは再び堤防に手を置く。

「……しかたありませんね」

　アルダリオンはため息をついた。リーゼはきっと魔力が完全に空になるまでこれを続けるつもりだ。

「サージ、先に屋敷に戻って、浴室に湯を張るよう頼んでもらえませんか。私がお嬢様をお運びします」

　そろそろリーゼの魔力は完全に尽きてしまうのがアルダリオンにはわかる。倒れるまで付き合うしかないが、戻ったらすぐに身体を温め、ベッドに入れなければ。

「まったく、誰に似たんだか……コルネリア様も、そういうところがあったがな」

　悪態をひとつついて、サージは身をひるがえす。アルダリオンはリーゼが倒れたその瞬間に手を差し出せるよう、細心の注意を払ってリーゼを見つめ続けた。

「……何をしているのですか」

　不意に声がして、アルダリオンは振り返る。そこに立っていたのは、デリモの町長だった。彼の後ろにも何人か、雨の中で活動できるようにフード付きのマントをかぶった男達が立っている。