幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 彼の中では、何事もリーゼが最優先。フランチェスカも、かなり有望だとされていたから、露骨に粗略に扱うような真似はしなかった。けれど、もし、フランチェスカの持つ魔力の量が少なかったら、彼はフランチェスカを視界に入れようとはしなかっただろう。
 半分とはいえ、血の繋がっている相手をそう断じるのはリーゼが冷たいのかもしれないけれど、共に暮らした五年の間で彼の性格は呑み込んでいる。
 リーゼがいなくなった後、彼がフランチェスカにどれほど厳しい訓練を押し付けているのか、なんとなく想像できるような気がした。

(フランと私は違うから、同じように対応してちゃダメなんだけどな)

 考え込んでいたから、庭に出たところでリーゼの足は止まっていた。
 リーゼは広げた両手をじっと見つめた。リーゼの手は、まだ小さい。
 かつて、もっと大きな手をしていた頃のことを思い出す。誰にも愛されず、日々、生活するので精一杯だったあの頃。
 あの頃の経験がまだリーゼの中に残っているから、あの人の望むように振る舞うことができた。
 フランチェスカに同じことをやれと言っても、難しい。

(早く、早く大人にならなくちゃ)

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