幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 フランチェスカのことを想うと、焦る気持ちがむくむくと頭を持ち上げてくる。早く大人になって、名前を取り戻すだけの功績を上げて――そして。

「主、何を考えている?」

 リーゼの側に、シドがお座りの姿勢で待っていた。リーゼが足を止めたので、彼もそれに付き合ってくれたようだ。
 リーゼが彼の方に目を向けると、彼はリーゼの頬をぺろりと舐めた。

「ん、ごめん……リーゼは、早く大人になりたいなって考えていたよ」
「焦ることなどないのに。主は、時々、死んだ人間のような目になるな」
「死んだ人間?」

 そんなに自分の目は濁っているだろうか。
 シドの目をのぞきこんでみるけれど、そこに映っている自分の顔は、いつもと変わりない。死んだ人間のような目ってちょっと言い方がヒドイ。

「ああ、違う違う。死を経験した人間、だな」
「死を経験したって……死んだらそれで終わりでしょ?」

 シドは鋭い。慰めるように、リーゼの頬に鼻先を押し付ける。ひんやりと濡れたその感触が、リーゼを安堵させるのも彼はきっと見抜いている。
 もう一度鼻を押し付けてから、シドは続けた。

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