幼女で領主で聖女様！？名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる！

「時々いるぞ。一度死んだ人間……埋葬の直前に息を吹き返したなんて話もあるじゃないか」
「やだなあ、そんなことないよ」

　シドは彼特有の嗅覚で、リーゼのことにも気づいているのかもしれない。なにしろ聖獣と呼ばれる存在だし、彼の嗅覚で人の悪意も感じ取ることができるのだから。

（……たしかに、一度死んだのはかわりないしね……）

　もし、佳奈としての人生が続いていたら、どんな一生を送ったのだろう。あの頃のことを思い出したいわけじゃないのに、ついそんな気になる。

「主、主ってば。吾輩は、主を悩ませたいわけじゃないぞ」
「ん、そうだね。大丈夫。シドが心配しているだけなのはわかってるよ――どうしようかな、ムラトのところに行って、仕事を見せてもらおうかな」

　ドワーフのムラトのために、彼専用の仕事場を設けた。彼には、ドワーフとしての能力を思う存分ふるってもらうつもりでいる。
　デリモの鍛冶屋は忙しく、農具の手入れだけでも手が回っていない。
　だから、その仕事場で、武器や防具の手入れを引き受けたりしているのだ。