幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 ムラトの作業を見学するのは、楽しい。それに、気が向いたら、彼と一緒に脱出路の整備に行くのも楽しい。
 ムラトの作業場では大きな火が焚かれていて、炉の周囲だけ真夏より室温が高かった。
 炉から少し離れたところに小さな椅子が置かれているのは、リーゼの特等席。
 ムラトの手元がよく見えるし、そこから動かなければ、ムラトもリーゼを気にせず作業が続けられる安全な場所だ。

「ムラト、お仕事見せてね」
「おう、リーゼか。そこに座っとけ。シドはどうする?」
「ここは暑いからな、吾輩は外で待ってる」

 毛皮に包まれたシドは、暑いのが苦手らしい。ムラトの作業場に入る時もあるけれど、今日は外で待っていることを選んだようだ。
 リーゼは用意されている椅子にちょこんと座った。
 膝の上にある両手は、兎のぬいぐるみ達をしっかりと抱えている。
ぬいぐるみ達は、そろそろ留守番させてもいいかと思いながらも、フランチェスカと繋がっている気がするからいまだに手放すことができない。

「ねえ、ムラト。今は何を作っているの?」
「これは、串だな」
「串?」
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