幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 二人ともリーゼの屋敷で暮らしているのだから、どちらを応援したらいいのかリーゼもわからない。頑張れ、頑張れと応援している間も、二人の手は卓上でぎりぎりと押し合っている。
 ムラトの方がわずかに優勢になったかと思ったら、アルダリオンがふっと息をついた。わずかにアルダリオン側に倒れていた腕が、再び中央へと戻る。

「や、やるなぁ、アルダリオン」
「リーゼお嬢様をお守りするのには、このくらいの力は必要ですからね」

 ムラトの額に汗がにじむ。アルダリオンの方は涼しい顔のまま。
 リーゼはぐっと息をのんで二人の攻防を見守っていた。

「――うわああっ」

 驚いたような声がしたかと思ったら、ムラトの腕がばたりと倒れる――アルダリオンの勝利だ。

「すごい! アルダリオンすごい!」

 リーゼはぴょんぴょんと跳ねた。ムラトといい勝負で終わるのかと思っていたら、アルダリオンが勝利を収めるなんて。

「ふふ、今夜は楽しいお酒が飲めそうですよ」

 アルダリオンは、にこやかな笑みをムラトに向ける。負けたムラトの方も、妙に爽やかな笑みだ。

「お前、やるなあ!」
「そうでしょう?」

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