幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 領主の館からの脱出路は、ムラトが整備してくれたし、いざとなったらそこから逃げれば問題はない。最悪、捕まることがあったとしても子供だからひどい目には合わされないですむだろうという計算もある。
 とにかくぎりぎりまではこの地にとどまり、敵の目をこちらに引き付けておかなくてはならない。それが領主としての役目だ。

「……でしたら、我々も逃げるわけにはいきませんな。公爵様が援軍をよこしてくださるまで、ここで耐えることにしましょう」
「ちょっと! それは駄目だって!」

 デリモの町長が重々しくうなずいた。ここに残るのはリーゼの義務。だが、町の人達にその義務はない。

「領主様を置いて逃げるなど、この町の者はできませんよ――あの日、命がけで堤防を守ってくださったのは、領主様じゃありませんか」
「……でも」

 集まっている大人達は晴れ晴れとした表情をしているけれど、逆にリーゼは表情を曇らせてしまった。町の皆を犠牲にしたいわけではないのだ。

「いいんじゃない? 以前はともかく、今なら対抗する手段がいろいろあるわけだし」

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