幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 場違いなまでに陽気な声と共に、リーゼの頭上に姿を見せたのはオルシウスだった。
 空中に胡坐(あぐら)をかいた姿勢でふよふよと漂う彼の姿に、町長がぎょっとした目を向ける。

「ああ、ごめん。君達、僕に会ったことはなかったよね? 僕は吸血鬼のオルシウス。リーゼちゃん家の居候ってとこかな」

 ばちん、と陽気にウィンクするオルシウスに、屋敷の住民以外はあっけにとられた様子だった。

(そうだよねぇ……普通は、そういう反応になるよねぇ……)

 リーゼだって、初めてオルシウスに会った時は、似たような反応を示したものだった。オルシウスは普通吸血鬼と聞いて想像する吸血鬼と比べると陽気過ぎる。

「ねえ、ムラト。街の防御は、ムラトが完璧にしてくれたんだよね?」
「お、おう……壁はリーゼのおかげで丈夫になっているし、脱出路も完璧だ」

 ムラトが胸を張る。

「アルダリオンの魔術があれば、敵をかく乱できる」
「その程度のことはたやすいですとも」

 アルダリオンは胸に手を当てて微笑んだ。

「隙をついて街中に入ってくる兵は、サージ達に頑張ってもらうこととして」
「そうだな、問題ない」

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