幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 サージは両腕を組んでうなずく。

「僕達は僕達で、夜中にヴハ王国の軍をひっかきまわしてくるよ。若い連中には、少し人間の生気を吸わせるのもいいだろうしね」

 それはそれでめちゃくちゃ物騒な雰囲気を感じるのだが、大丈夫なのだろうか。

「それなら、吾輩は犬達を連れて寝込みを襲うとするか。夜眠れないようにしてやろう。食料保管庫の干し肉も食らいつくしてやる」

 シドが牙をむいて笑う。
 シドは、街中の犬達を完全に手なずけている。それに、ヴハ王国の軍が犬を連れてきていたとしても、シドの前には絶対服従だろう。

「ほら、なんとかなりそうな気がしてきたでしょ」

 オルシウスはのんきな顔をして、リーゼの顔をのぞきこむ。言われてみれば、公爵の軍が来るまで持ちこたえることくらいはできそうだった。
 ――公爵が、本当に援軍を送ってくれる、と仮定しての話だが。
 リーゼの屋敷に、普通の人間ではない人達がいるのは、もう当然のように受け入れられていた。町長も、空中であぐらをかいているオルシウスの存在に、即座に慣れたようだ。

「オルシウス殿――と言ったか。我々にできることはありませんか?」
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