幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
「わかった。町長、並行して避難の準備も始めてくれるかな? リーゼも、本気で危なくなったら逃げるから」
「わかりました」

 こうして、ヴハ王国を迎え撃つ準備は始まった。
 まず、ムラトが用意したのは、子供の手でも扱いやすい木型だった。力のある大人達は、街を囲う壁の前を深く掘る作業に駆り出されている。
 その作業で発生した土は、町の中に運び込まれ、水をくわえて泥団子を作れるほどの硬さにする。そしてムラトの作った木型でその泥を同じ大きさの泥団子に仕上げるのだ。
 出来上がった泥団子は、リーゼがせっせと硬化スキルを発動して固めていく。子供達は遊びの延長だと思っているようで、この場所はのどかな空気が漂っている。

「……リーゼ、皆を巻き込んじゃったかな」

 そうつぶやくと、側にいたアルダリオンは反論してきた。

「違いますよ。お嬢様が、皆を大切にしたいと思っているから、皆もリーゼお嬢様を大切にしたいと思っているのです。お嬢様は、見返りもなく私達を助けてくださったでしょ?」
「でも、リーゼがしたわけじゃないよ。皆がやってくれたんだもん」

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