幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 どうしたって、不安を覚えると、兎の耳を吸わずにはいられない。どうして、リーゼロッテは、耳を吸わないでいられるんだろう。

「まあ、可愛らしいお嬢様達ね」

 フランチェスカとリーゼロッテの父親は公爵だから、二人の家にはたくさんのお客人が来る。
フランチェスカとリーゼロッテが手を繋いで立っているところを見ると、大人達はいつもそう言う――けれど。
 父親はフランチェスカよりリーゼロッテの方が大切だ。二人が手を繋いで立っていても、父が先に手を伸ばすのはリーゼロッテ。

「お父様、フランが待ってる」

 リーゼロッテにそう言われて、父は初めてフランチェスカの方に向き直るのがいつものことだ。
 逆に、母は、いつも先にフランチェスカに声をかける。
 そして、それからリーゼロッテに注意を向ける。母が声をかけるまでリーゼロッテはいつもおとなしく待っている。
 はたから見ていれば、母はフランチェスカの方をリーゼロッテより大事にしているように見えるかもしれない。
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