幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 リーゼロッテは、いつだってフランチェスカのことを優先してくれた。
 父の目が自分にしか向いていないのも気づいていて、父の前にフランチェスカを優先して押し出してくれた。

(今まで、なんで気づかなかったんだろう)

 今まで、リーゼロッテの好意に無意識のうちに甘えていた。リーゼロッテが譲ってくれて当然だと思っていた。
 だって、そうしなければ父はフランチェスカを見てくれなかったから。
 だけど、今はリーゼロッテには誰もいない。

(リーゼ、どこにいるの)

 今まで、こんなに長くリーゼロッテと離れていたことはない。
 灰色兎の耳を吸いながら、リーゼロッテのことを思う。

(寂しい、寂しい、寂しいって……)

 リーゼロッテの、心の声が聞こえた気がした。
 何の罪もないのに、追い払われてしまったリーゼロッテ。
 屋敷の中がざわざわしているのも知っている。
 母がせわしなく行き来して、どこかに手紙を書いたのも、受け取った手紙を抱きしめるようにして、女神の名をつぶやいたのも。

(ものすごく、悪いことが起こるような気がする……)

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