幼女で領主で聖女様！？名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる！

（お父様のやり方は、どうかと思うけど……でも、しかたない……のかな……）

　普通の五歳の女の子なら耐えられなかっただろう。誰もいない部屋にひとりきりの食事。ベッドは硬く、入浴さえもままならないそんな生活。
　リーゼロッテだって、前世の知識がなかったらきっとうろたえるしかなかった。
　この家から出ていけと言うのなら、従うしかないのだろう。この家の決定権はすべて父が握っている。

（せめて、最後は笑顔でお別れしよう）

　そう心に決めてリーゼロッテは父の前に立った。
　それなのに、父はまたもやリーゼロッテを打ちのめしにかかる。

「――お前は、私の娘ではない」

　久しぶりに顔を合わせた父は、リーゼロッテを見るなりそう言い放った。
　今まで愛おしそうにリーゼロッテを見つめていた目は、冷たいものへと変化している。本当は視界に入れたくないのだろうと感じざるをえなかった。

「……はい、お父様」
「父ではないと言った！」

　うつむいて返事をしたリーゼロッテは、あまりの大声に飛び上がりそうになる。

「フリードベルク公爵家には、外れスキルを持つ者など存在してはならないのだ。だから、お前は私の娘ではない。お前には、"リーゼ"という名を半分だけ残してやろう。ありがたく思え」