幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 初めてリーゼを見た時、そう思わずにはいられなかった。
 妹のフランチェスカの方がまだサージにはわかりやすかった。リーゼと離れたくないと泣いて、母のスカートの陰から、ちらちらとこちらの様子をうかがっている。
 それなのに、リーゼの方はまるで違う。五歳という年齢にしては落ち着き過ぎている。
 瞳の奥に、年齢以上の何かを隠している。それは、どこか無理をしているようで、放っておいてはいけないと思った。
 最初の日、サージはリーゼから目を離さないようにした。リーゼは危うい。放置しておいたら、きっと自分の殻に閉じこもる。

「団長。あの子ちょっと変」

 リリンダが、緊張した顔でそうつぶやいたのは、旅を始めたその夜のことだった。
 リリンダは、五年前、戦場で拾った娘だ。両親は戦のどさくさ紛れに殺されてしまったらしい。
 平和な街に連れていき、そこで奉公先を見つけるか、養女として引き取ってくれる先を探そうと思っていたら、彼女は剣を取ることを選んだ。
 女性の傭兵もいないわけではないが、わざわざ戦場に出ることはないだろうに――と最初は反対したけれど、リリンダは半端な気持ちではないと、サージが舌を巻くほどに己の腕を磨き上げた。
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