幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 十五歳の少女の割にぶっきらぼうなしゃべり方しかしないのは、目の前で親を殺されて以来、感情を上手に出せなくなったからだ。

「変って何が?」
「ずっとこう――"かたくなぁれ"って」

 手近な石を拾い上げ、リリンダはリーゼの真似をしてみせる。

「ああ、リーゼ嬢ちゃんのスキルは"硬化"だからな。スキルを発動して魔力を流し込むと、流し込んだものを硬くできるんだ」
「でも、ずっと。馬車に乗ってる間、ずっとやってる」
「そりゃとんでもない魔力の量だな……魔力の量が多いって話は聞いてたが」

 普通の人間なら、"硬化"は連続して五回も使えば体内の魔力が尽きてしまうそうだ。外れスキルと言われるのにはそんな事情もある。
 馬車に乗っている間ずっとスキルを発揮し続けることができるというのは異常な魔力量の保有者だ。

(……まあ、俺が気にかけてやるしかないか)

 リリンダをうっかり拾ってしまったのも同じ理由だ。
 頼る者のいない相手を見かけたら、サージは手を差し伸べずにはいられない。
 そして、デリモに到着するまであと少しというところで、国境を越えてきた盗賊団に襲われた。
 最初にサージが倒れたのは、不覚以外の何ものでもない。
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