志岐さんと夏目くん
数メートル前を歩く四人に聞こえないくらいの小さな声で話し続ける。
と言っても、四人はこっちのことなんか気にしてないくらい、相変わらずの様子だけどね。
だから思う。
彼らは、夏目くんに色々と見せつけたかったんだろうな。
今の自分の見た目や、可愛い彼女さんのことや、誰にも負けないくらいのラブラブっぷりを……自慢したかったんだ。
そのことに、夏目くんももう気づいてる。
「俺らが付き合ってないってこと、アイツらは気づいてるんだろうな。 だからこそ余計に見せつけてるのかも。 「お前らも本当に付き合ってるならこのくらいしろよ」って感じでさ」
「言っちゃ悪いけど、夏目くんの友達って性格悪いね」
「アハハ、俺も同じこと思ってたから大丈夫」
フゥ……と一つ息を吐き出したあと、夏目くんは真っ直ぐに前方を見つめた。
「志岐さんが偽物の彼女だってバレてるとしても、俺はこのまま志岐さんの彼氏として動くね」
「見栄を張り続けるんだ?」
「うん、今後はもうアイツらには会わないだろうけど……でもだからこそ、見栄は張り続けていたい」