志岐さんと夏目くん


「……他の人に対しても、あんまり怒ったりしないでね?」

「それは時と場合による。 志岐さんのこと色々言われたらムカつくもん」

「もー、私は大丈夫だよ。 さっきのだって、自分が言われてるって一瞬気づかなかったくらいだし」



そう言って笑ったあとに、ふぅと息を吐き出した。



「……私のことで怒ってくれるのは嬉しいけど、夏目くんが傷つくのは嫌だからね。 それは絶対に嫌だよ」

「……うん、わかった。 怒りすぎないように頑張ります」

「ふふっ、頑張って」



……よかった。

もういつも通りの夏目くんだ。


夏目くんが男子たちに殴りかかったりしないで、本当によかった。



「おーい夏目、志岐さーん。 二人でなーに喋ってるんだー?」

「なんでもない。 それより小日向、メイド喫茶に戻って仕事しなくていいのか?」

「あ、忘れてた。 つーか、ぶっ壊されたメイド服代を茶髪野郎に請求すんのも忘れてた。 今から探せばまだ見つかるかな?」

「アイツらのことは放っとけ。 もう行こう」



空き教室を出て、みんなと一緒に移動していく。


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