志岐さんと夏目くん
……今後はもう会わない、か。
そうだよね。
あんな態度を取られたら、もう会いたいと思うわけがない。
彼らがどう思ってるのかは知らないけど、夏目くんの気持ちはとてもよくわかる。
だから私は、小さく小さく頷いた。
「……わかった、協力するよ。 でも私に「彼女らしい振る舞い」は期待しないでね? 私、彼氏なんて今まで居たことないからさ」
「うん、全然普通にしてていいよ。 と言ってる俺も、彼女が居た経験なんてないから……「彼氏らしい振る舞い」は出来ないだろうなぁ」
「じゃあお互いに普通にしてる、ということで。 慣れてないのに変にベタベタするのもおかしいし」
「……あ、でも、手は繋いでもいい? 一応、ほら、恋人同士っぽい感じでさ」
「あーそうだね、そうしようか。 多少はカップルらしく」
「うんうん。 それっぽい感じで、是非お願いします」
と、手を差し出され、私はその手を ごくごく普通に握りしめた。
躊躇いも恥ずかしさも、緊張もなく。
これなら本当のカップルに見えるかな?
なんて思いながら、四人の後ろを着いて行く。
──それから程なくして、私たちはカラオケ店に到着した。