志岐さんと夏目くん
「ののちゃん、がっつき過ぎ〜」
「ジュリだってそうじゃーん」
「だって他校の人と仲良くなれるチャンスなんて滅多にないしさぁ、どうせならイケメンと仲良くなりたいでしょー?」
「うんうん、そのとーりっ!!」
そんな風に笑う二人と一緒に、廊下を進んでいく。
女子同士は面倒臭い。って思うけど、二人を見てると自然と笑顔になって、楽しいって気持ちの方が勝つ。
あまり会話に加わっていなくても、こうやって明るい場に一緒に居るのは本当に楽しかった。
──……二人にクラスメイトのことを色々教えながら、更に廊下を進んでいく。
と、教室の前の廊下で呼び込みをしていた鳴沢くんが、私たちに可愛らしく微笑んで頭を下げた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「ふふっ……鳴沢くん、お疲れ様。 すっかりメイドさんが板についた感じだね。 夏目くんたちは……まだ準備中?」
「うん、なんか裏でワチャワチャやってるみたいだよ」
喫茶店の中を覗くけど、先に戻った夏目くんたちの姿はない。
夏目くん、本当にメイドさんをやるのかな?
少しの心配と、かなりの期待を感じながら裏方へと続くドアを見る。