志岐さんと夏目くん
本人は不服そうな顔をしてるけど、イスに座ってるから自然と上目遣いになり……更に可愛い。
「なんで俺がこんなことを……裏方を手伝うつもりだったのに……」
「ほら夏目くん、動かないでっ。 リップがズレるっ」
「……うぅ……」
「クラスの売上のためだから。 はい、完了っ」
「馬場ちゃんの鬼ぃ……」
今にも泣き出しそうに、目がウルウルしてる。
ヤバい……本当に可愛い。
他の男子たちのメイクは笑いを誘うような感じなのに、夏目くんのは全然違っている。
肌、メッチャ綺麗……。
「恥ずかしがってるメイドさん、これは売れるっ。 さすが馬場ちゃん、ナイスメイクっ」
「小日向たちは面白メイクが合ってたけど、夏目くんは絶対ナチュラルが似合うと思ってたんだよね〜。 さっすが私っ。 さぁ夏目くん、行くよっ。 私がフォローしてあげるからっ」
「頑張れーっ」
夏目くんは必死に私に助けを求めてきたけれど……そのまま有無を言わさず連れて行かれた。
……頑張れ、夏目くん。
そう心の中で言い、彼が無事に帰ってくることをただただ祈り続けた。