志岐さんと夏目くん
「志岐さん、さっきの話だけどさ」
「え?」
「ほら、誰かにまたなんか言われそうで嫌だなーって言ってたやつ」
「あー、うん」
自転車を並んで押してる時に、小日向くんがふっと私を見て微笑んだ。
「まぁ、人それぞれ色んな考え方があるからさ、やっぱり誰かしらは文句言ったり陰口を叩いたり……っていうのはあると思うよ」
「……うん」
「でも夏目と一緒に居たら、きっと そんなのどうでもいいやって思うんじゃない? 訳のわからん外野の言うことをいちいち気にするより、隣に居るアイツとの時間を大事にした方がいい。 絶対その方が楽しいよ」
……外野の言葉を気にするより、夏目くんとの時間を大事に……か。
うん。
確かにそうだ。
まったく気にならないって言ったら嘘になるけど……でも、夏目くんとの時間を何よりも大事にしていきたい。
夏目くんに言われた言葉を、思い出す。
──「他の奴の言葉なんてどうだっていいよ。 誰に何を言われたって俺の気持ちは変わらないし、志岐さんだってそうでしょ?」
うん。
私も同じ。
周りの人の声は気になるけど、でも……夏目くんを想う気持ちは変わらない。