志岐さんと夏目くん
「あっ志岐さんっ」
「ねぇねぇ夏目くんと付き合うってほんと〜?」
「やっぱり「彼女のフリ」がきっかけ?」
「いいなぁ、私が「彼女のフリ」をしたかったよ〜」
「ねぇー。 そうすれば私たちにもチャンスあったかもしれないのにー」
と、裏方の女の子たちが声をかけてきた。
なんか……また女同士のドロドロに巻き込まれそうな雰囲気……?
「お・ま・え・らぁー、クッソ忙しいのに何をのんびり喋ってるんだよ。 仕事せいっ」
「えー、だって〜」
「「だって〜」じゃねぇよ。 働け働け、馬車馬の如く働けっ」
「アハハ、ウケる〜」
「何がだよっ」
小日向くんが声をかけてくれたおかげで、女子たちの視線が私から逸れた。
そのあと……彼は更に言葉を続けていった。
「大体なぁ、夏目が志岐さんに惚れてるんだよ。 ゾッコンだよゾッコン。 メロメロで首ったけで溺愛してんだからチャンスなんかあるわけないだろ?」
「小日向、いろんな言葉知ってるねぇ」
「おうっ、俺は恋愛のエキスパートだからなっ」
「彼女居ないくせに〜」
「うるさい、俺の壮大な愛を受け止められる奴が居ないだけじゃっ」
……と、場が爆笑の渦に包まれる。
その直後に、小日向くんが今度は私を見た。