志岐さんと夏目くん
「あっ、でも誰かに責められた時は、またフォローしてくれたら嬉しいな。 だって何か言ってくる人って、複数で来ることが多いから。 ズルいよね、一人じゃ何も言ってこないのに二人とか三人になると急に強気になるんだもん」
「……」
「近藤くんと山口くんもそういうタイプだろうなぁ。 カラオケ行った時も今日も、二人一緒じゃないと何も言ってこない感じだったし。 まぁ小日向くん一人に「口撃」で負けてたけど」
「……ねぇ、志岐さん」
「うん?」
「「好き」って言葉は、堂々と言わなくていいよ」
真っ直ぐに私を見つめる夏目くんに、ポン、と頭を叩かれた。
「誰にも宣言する必要なんてない。 何も言わなくていいよ」
「……でも、聞いてくる人は絶対に居ると思うよ?」
「その時は「俺が志岐さんに惚れてるんだ」って、俺が言う」
「えー、夏目くんは言うんだ? でも もしも夏目くんが居ない時に聞かれたら?」
「完全無視。 そんなアホは放っとけばいいんだ」
机越しに……夏目くんが私を抱きしめる。
ただただ優しく、すべてを包み込むかのように。
「俺にだけ言えばいいよ」
耳元で聞こえた声。
そのあとに、そっと唇と唇が重なり合った。