志岐さんと夏目くん
まだ他のクラスには誰か居るかもしれないし、廊下だって誰かが通るかもしれない。
なのに夏目くんは、なんの躊躇いもなく私に触れた。
ごくごく自然に、当たり前のように微笑みながら。
「好きだよ、志岐さん。 前からずっと。 そしてこれから先も、ずっとずっと好きだよ」
揺れることのない想い。
その想いを全部真っ直ぐに受け止めながら、私も微笑んだ。
「私も夏目くんが好き。 夏目くんの全部が好きだよ」
「志岐さんに意地悪するところも?」
「ふふっ、そうだね。 でも度が過ぎたら わかんないなぁ」
「アハハ、肝に銘じておきます」
そんな風に言いながら、二人で一緒に笑い合う。
「じゃあ、俺たちもそろそろ帰ろうか。 今日は家の近くまで送るよ」
「ありがとう。 だけど……すっごく時間かかるし、電車代だって往復分かかっちゃうから大変じゃない?」
「全然 大丈夫。 あ、でも毎日ってなると金銭的にちょっとキツいから、「必ず送って!!」って言われたら断固拒否する。 そこは曲げられないんで、ご了承くださいませ」
「ふふっ……そんなこと言わないよ。 夏目くんに無理をされるのは嫌だしね」
「それは俺も一緒。 志岐さんも、無理はしなくていいからね?」
「うん」