志岐さんと夏目くん
「志岐さん、彼女の役 ご苦労さまー」
「ソイツと一緒に居ると疲れるだけだから今後は近づかない方がいいよー」
ギャハハッと下品に笑う声。
それを間近で見てる佐々木さんと平山さんは、さすがに少し引いたような顔だったけど……それに気づかないくらい、男子二人は大笑いをしている。
なんか。
うん。
このまま帰るのは、なんか嫌だな。
夏目くんは今までほとんど絡んだことのないクラスメイトだけど。
だけどそれでも、やっぱり酷く言われるのは腹が立つ。
だから。
つい。
つい動いてしまったんだ。
「夏目くん、ごめん」
「え?」
「本当にごめん」
繋いでる手を、グイッと引く。
そしてそのまま……夏目くんの唇に、自分の唇を重ね合わせた。