志岐さんと夏目くん
次の電車まで……あと十五分。
ここから駅までは五分もかからないだろうから、だいぶ余裕がある。
なんてことを考えていた時に、夏目くんがコンビニから出てきた。
手に、何かを持ちながら。
「志岐さん、これ。 俺からのお詫びの品」
「えっ?」
「家に帰ればいっぱいあるって言ってたけど、でもやっぱり ちゃんと返したいなって思ってさ」
……それは、ハンドタオルだった。
私が普段買う五枚ワンセットの安くて薄い生地のものとはまるで違う。
ちゃんとした個包装の袋に入った、立派なタオルだ。
「も、貰えないよっ。 すぐに返してきなっ? ねっ?」
「もう開封しちゃうから無理」
「わーなんで開けちゃうのっ!? これじゃあ返品出来ないじゃんっ……」
「うん、だから貰ってください」
袋から取り出されたタオルをそのまま手渡される。
フワフワで肌触りが良くて、凄く気持ちいい……。
「そして俺は志岐さんから飲み物を貰う、と」
「……全然 割に合わないよー……」
「細かいことは気にしなくていいよ。 ていうか、俺の気持ちの問題だから」