志岐さんと夏目くん
スポーツドリンクを口に運んだあと、夏目くんは私に笑顔を見せた。
「今日は色々とごめんね。 彼女のフリしてくれて、ありがとう」
「……私も、色々とごめんね。 それと、タオルありがとう。 大事に使うね」
「どう致しまして。 じゃあ駅に行こ。 電車の時間はまだ大丈夫?」
「うん、次の電車まであと十五分くらい」
「そっか。 結構暗くなってきたし、家の近くまで送ろっか?」
「大丈夫大丈夫、電車降りたらすぐ家だから」
私の家は、電車に乗って片道三十分。
ただ帰るだけの私と違って、夏目くんには相当な負担だ。
さすがにこれ以上の迷惑はかけられない。
そう思ったから、送ってもらうのは全力で断った。
「本当に大丈夫?」
「一人で帰るのなんて慣れてるし、全然大丈夫っ」
「んー……じゃあさ、家に着いたら連絡して? そうすれば俺も ちゃんと安心出来るから。 って、志岐さんの連絡先知らないや。 えっと……連絡先、教えてもらってもいい?」
「もちろんっ。 家に着いたらすぐに連絡するね」
「ん……ありがとう」
その場でサッと連絡先の交換を済ませる。
女の子は何人かリストに入ってるけど、男の子を登録するのは初めてだ。