志岐さんと夏目くん
クラスの人気者、夏目くんの連絡先が私のスマホに入ってるなんて、なんだか不思議な気分がする。
彼とは同じクラスだけど、ほとんど話したこともなかったし……いつもどこか遠い存在の人だと思ってた。
でもこんなに身近なところに名前がある。
こんなに、そばに居る。
「行こう」
と言った夏目くんは、当たり前のように手を差し出した。
そして私も、当たり前のように彼の手に自分の手を重ね合わせる。
男子と手を繋いで歩くなんて……今までじゃ考えられなかったことなのに。
何故だろう。
夏目くんなら平気だ。
夏目くんと手を繋いで一緒に歩くのは、全然 嫌じゃない。
「あ、そういえばもうすぐ学園祭があるけど、俺らのクラスは何をやると思う? やっぱり食べ物系かな?」
「うちのクラスは男女共に顔の整った人が多いから、それを活かせるような何かがいいよね。 メイド喫茶とか、執事喫茶とか」
まぁ何をやるにしても、私は絶対に裏方希望だけどね。