志岐さんと夏目くん
「小日向くんはそういうのノリノリでやりそうじゃない? 鳴沢くんも」
「あー小日向と鳴沢はやるね、メチャクチャなりきって楽しむね。 馬場ちゃんもメイド服とか好きそうだな〜」
「うん、絶対似合うと思うっ」
約一ヶ月後に迫っていた学園祭の話をしながら、私たちは笑い合う。
コンビニに入る前とは大違いで、二人とも自然な顔で楽しく会話を続けていた。
駅に着いたあともそう。
とにかく楽しくて、楽しくて、ずっとこんな時間が続けばいいなって思っていたけれど……終わりは必ずやって来る。
「……おっと、もう電車が来る時間か。 時間過ぎるの早いなぁ」
「ほんと、なんだかあっという間だったね。 じゃあ私、ホームに行くね」
「ほんとに家の近くまで送らなくて平気?」
「平気平気。 またね、夏目くん」
「うん、また明日」
名残惜しそうな顔の夏目くんに手を振り、一人で改札を抜ける。
長い長い一日が終わる。
この電車に乗って三十分。
そのあと最寄りの駅から少し歩けばすぐに私の家だ。
帰ったらすぐに夏目くんに連絡して、それから……──と、色々なことを考えていた時。
ポケットに入れていたスマホが微かに振動した、ような気がした。