志岐さんと夏目くん
私に喋りかけてくる人なんて滅多に居ないから、こんなに近くに立たれてても全く気づかなかった。
なんだろう?
「……えっと、聞きたいこと、って?」
「昨日夏目くんと一緒に居たよね?」
「え?」
「昨日の放課後。 夏目くんと一緒に駅で喋ってたでしょ?」
その言葉に、クラスがざわめく。
……あぁ、見られてたんだ。
そりゃそうか。
学生たちで混んでる時間帯ではなかったけど、だからって学生が一人も居なかった というわけじゃない。
全然気づいてなかったけど、見られてたんだ。
「何か親しげに話してたよね? どういう関係なの?」
……困ったな。
なんて説明しよう。
ていうか、面倒臭い。
教室の中に夏目くんも居るんだから、直接 夏目くんのところに聞きに行けばいいのに。
なんで私?
一人で居るから?
二対一なら「口撃」がしやすいから?
あぁもう。
私も女だけど、ほんと女って面倒臭い。