志岐さんと夏目くん
「あなたって夏目くんのなんなの?」
「えーっと……見ての通り、ただのクラスメイトですが」
「は? ただのクラスメイトが手を繋ぎながら一緒に歩くわけ?」
「……」
クラスのざわめきが、一段と大きくなる。
「どう見てもただのクラスメイトに見えなかったんですけど」
「そうだよ、絶対あり得ないからっ!!」
ピリつく女子二人に、教室内には緊張感が広がっていく。
……さて、どうしようか。
下手に誤魔化しても、彼女たちは納得しないだろう。
むしろボロが出てしまっては困る。
……昨日のことは言えない。
言ってはいけない。
夏目くんは昨日友達二人を失い、いっぱい傷ついた。
そんな彼をこれ以上 傷つけるようなことはしない。
だから私は夏目くんが張った見栄を守り通す。
それだけだ。
……と、密かに決意を固めた時だった。
「ねぇ、なんで志岐さんにだけ聞いて、俺には何も聞いてこないの?」
私の真正面の席に腰を下ろした夏目くんが、にっこりと笑みを浮かべた。