志岐さんと夏目くん


「そのあとはすぐに帰ったよ。 俺のことはともかく、志岐さんのことも馬鹿にするような感じだったからさ。 さすがの俺もムカついた」

「へぇー、お前を怒らせるなんてソイツらすげーじゃん。 つーかやっぱり俺を呼んどきゃよかったんじゃね? 俺だったらいつでもイチャイチャ大歓迎なのに」

「俺は絶対に嫌だっつーの」



という夏目くんと小日向くんのやり取りに、場が爆笑の渦に包まれる。


……キスのことは、話に出なかった。

ううん、その話が出ないように、夏目くんが上手くまとめてくれたんだ。

大まかな話はそのままに、みんなが納得するような終わりへと導いてくれた。

私に迷惑がかからないように、って。

迷惑をかけてしまったのは私の方だったのに……。



「あっ、ていうか志岐さんを質問攻めにするのは無しねっ? だって志岐さんは、見栄っ張りな俺にただただ付き合ってくれただけなんだから。 質問があったら俺に聞いて? ちゃんと全部答えるよ」

「好きな食べ物はなんですかー?」

「唐揚げとバニラアイス……って、全然昨日のこと関係ないじゃん!!」

「あははっ、夏目おもしれぇー」



明るい小日向くんに釣られ、みんなが笑う。

からかわれてる夏目くん自身も、なんだか楽しそうだ。


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