志岐さんと夏目くん
「くそ、薄情な奴らだな」
「さてさて、俺も終わったから帰りますかね」
「うっわ鳴沢、お前ももう終わったのっ!?」
「楽の勝さ。 若者よ、精進せい」
「いやジジイかよ」
人生何周目だろう、なんて思うくらいの余裕のある微笑みを見せた鳴沢くんは、残っていたみんなに挨拶をしたあと帰って行った。
元々の装飾班だったメンバーも、順に作業を終わらせてそれぞれ教室をあとにした。
「あれ? 志岐さん、今日の分はもう終わってるよね? まだ作るの?」
と、夏目くんに声をかけられる。
いつも挨拶くらいはするけど、マトモに喋るのは久しぶりだ。
「えっと……作るっていうか、明日の下準備だね。 今日のうちに折り紙を切っておけば、明日はもっと効率良く進められるでしょ? 装飾班は少ないし、いつも手伝ってくれる人が居るとは限らないから……出来ることはしておきたいの」
「……そっか。 じゃあ俺も一緒にやるよ」
「え、夏目くんは帰っていいよ? これは私が勝手にやってるだけだもん」
「効率良く、って言うなら二人でやった方が効率が良いじゃん。 それに俺も、正式な装飾班だしね」
「……ありがとう」
「うん」
お互いに笑顔を見せ、作業を進めていく。