志岐さんと夏目くん
「じゃあ、「彼女のフリ」をした時は色々大変だったんじゃない? 志岐さんも多少は向こうの奴らと喋ったんでしょ?」
「女子二人とは雑談したけど、案外大丈夫だったよ。 男子とセットじゃなければ、また会ってもいいかなって思うくらい」
「アハハ、男の方はほんっとにヤバい感じだったんだねぇ。 あーそのアホ男共、マジで学園祭来ないかなぁ」
そう言いながらニヤリと笑う小日向くん。
そんな彼の頭に、夏目くんが力いっぱいにチョップをお見舞した。
「いっ……てえぇ……」
「また手が止まってる」
「……ちょっとくらい休憩したっていいじゃん。 つーことで、飲み物買ってくるっ!!」
「あ、おい小日向っ」
夏目くんが止める間もなく、小日向くんはピューッと駆け足で教室を出ていった。
あっという間に、二人きりだ。
「……ハァ。 ごめん志岐さん、俺アイツの分を進めるよ。 どうせしばらくバックレる気だろうし」
「ふふっ、了解。 私はこのまま明日の分を作っておくね」
「うん」
短いやり取りのあと、それぞれ黙々と作業をしていく。