志岐さんと夏目くん
……二人きりはもっと緊張するかと思ったけど、全然大丈夫。
前と変わらない。
夏目くんは私にとって「ただのクラスメイト」だ。
「あ、そういえば、志岐さんは学園祭当日ってどうするの? 朝の準備が終わったら、ほとんどフリーだよね?」
と、声をかけられる。
「あー……多分、裏方の手伝いをしてると思う」
「え、装飾班なのに裏方もやる気っ……!?」
「うん、どうせ暇だから」
去年もそんな感じで、ほぼほぼ裏方作業をしていた。
お昼の時間には多少出店に行ったけど、どこかで遊んだりは全然ない。
「……志岐さん。 暇なら一緒に回ろうよ」
「え?」
「俺と二人でさ、一緒にあちこち行ってみない?」
「……二人、で……?」
「うん」
鼓動が、今までにないくらい速くなる。
真っ直ぐに私を見る夏目くんは、とても優しく笑っていた。
「俺、志岐さんと一緒に歩けたら、凄く嬉しいよ」
「……」
「ダメかな?」
ダメ……じゃ、ない。
私も嬉しい。
凄く凄く嬉しい。
一緒に回ってるのを想像しただけで、胸がいっぱいで幸せな気持ちになる。
でも。
だからこそ……ダメだ。