志岐さんと夏目くん
家族以外に名前を呼ばれることなんてないから、なんかちょっと……恥ずかしいような、くすぐったいような、変な感じがする。
「なに、お前 彼女のこと「志岐さん」って呼んでるの?」
と、山口くんがケラケラと笑った。
「つーか志岐さんも夏目のこと苗字に「くん付け」してるし。 付き合ってから二ヶ月くらいってメールで言ってなかったっけ? あ、ほんとは付き合ってないとか? だからお互いよそよそしい感じだったりして〜?」
「お前らが居ないところじゃ普通に名前で呼び合ってるから心配すんな」
「アハハ、嘘くせぇー」
……あーぁ、夏目くんってばまた口から出任せを……。
嘘に嘘を重ねていくと余計に大変なのに。
「ねぇー、立ち話もなんだしさぁ、カラオケ入ろうよー」
「すぐそこにあるもんねぇ」
「うんうん、どっか座りたいー」
女子二人が、それぞれの彼氏にピッタリとくっつく。
まるでそれぞれの仲の良さを見せつけてるかのようだ。
そんなことをされた男子二人は、わかりやすくデレデレしてる。
んー。
話しやすそうって思ったけど、やっぱり違うかも……。