志岐さんと夏目くん
「……よかった。 間違ってたら俺、死んでお詫びしようかと思ってたもん」
「ふふっ、大丈夫。 同じ気持ちだってわかって凄く嬉しいよ」
「うん」
私のことを抱きしめ返す夏目くんが、安心したように息を吐き出したのがわかった。
そのあと、ゆっくりと体を離す。
手は繋いだまま、隣同士に座り……夏目くんが言う。
「俺ね、二年になる前から志岐さんのこと知ってたよ」
「え? 違うクラスだったのに……?」
「うん。 初めて知ったのは、去年の学園祭の準備中。 だから、ほぼ一年前だね」
……一年前。
私がまだ夏目くんのことを知らなかった頃だ。
その当時のことが、ゆっくりゆっくりと語られ始めた。