志岐さんと夏目くん
「そのあと、この場所で色々喋ったよ。 志岐さんの名前を聞いたり、「こんな感じの女子だよ」っていうのを教えてもらったり。 俺と鳴沢は その日のうちに連絡先の交換をして、今日までずっと色々なことを喋ってきたんだ」
「なるほど。 だから二人は 二年生になった初日から笑顔で話してたんだね。 別のクラスだったのにすっごく親しいんだなぁって思って見てたのを、今でも覚えてるよ」
「うん、鳴沢と一緒のクラスになれたのは本当に嬉しかった。 でも俺は、志岐さんと一緒のクラスになれたことの方がもっともっと嬉しかったけどね」
そう言った夏目くんが、真っ直ぐに私を見る。
とても優しく笑いながら。
でも、どこか申し訳なさそうに。
「俺ね、「ただのクラスメイトでいい」「一緒の空間に居られるだけでいい」って思いながら毎日を過ごしてたんだ。 でも……近藤と山口が会おうって言ってきた時、「これはチャンスだ」って思ったよ」
「……私と、会話が出来るから?」
「そ。 迷惑がかかるってわかってたのに、邪な気持ちが邪魔をしたんだ」