志岐さんと夏目くん
重ね合わせていた手に、ギュッと力が込められる。
「教室で声をかけるのは凄く緊張した。 腕を引っ張って行くのも本当に心臓がバクバクしててヤバかった。 説明した時に志岐さんに「迷惑」って言われて、「あぁもうマジで嫌われた」「絶対もう無理だ」ってなってかなりヘコんだよ」
……あの時、そんな風に思ってたんだ。
私の「迷惑」って言葉にヘコんでるだけかと思ったけど、実際は色々と思っていたらしい。
「すげーヘコんだけど、でもそのあとに志岐さんは俺と一緒に行くことを選択してくれた。 だから本当に嬉しくてさ、奇跡が起きたっ!! 神様ありがとうっ!! って内心大喜びしてたんだ」
「……そんな大袈裟な……」
「いやいや、本当だよ。 これがきっかけで話す時間が増えたらいいなって思ってた。 お礼と称して何か贈りたかったし、なんなら今度は二人で出かけようって誘うつもりだったし。 ……アイツらと会う前は、色々と考えてたんだよ」
ふと。
夏目くんがまた申し訳なさそうな顔をする。
「神様ありがとうっ!!」なんて言ってた時は、凄く明るい顔に戻ってたのに。
でも……申し訳なさそうな顔をする理由は、わかってる。