志岐さんと夏目くん


「私、彼氏なんて今まで居たことなんてないからさ、私に「彼女らしい振る舞い」は期待しないでね?」



口元から手を離したあと、いつかに言ったような言葉を 今日また夏目くんに言ってみる。

そんな私に、夏目くんは小さく小さく頷いて微笑んだ。


そのあとに、そっと唇と唇が重なり合った。

お互いの気持ちを理解し合ったあとの、初めての口づけだ。



「振る舞わなくていいよ。 「彼女のフリ」を頼んでるわけじゃないから、自然のままでいい」

「……自然、は無理。 急にキスされるのはメチャクチャ恥ずかしい……」

「アハハ、顔真っ赤。 志岐さんってほんと可愛いなぁ」

「……可愛くないよ、メイド服を着た小日向くんの方が百倍可愛いよ」

「いやそれは断じて可愛くないから」



なんて言いながら、二人でまた笑い合う。

恥ずかしい気持ちはあるけど、でも……やっぱり嬉しい。

夏目くんが私の隣に居てくれて、凄く凄く嬉しいし、幸せだ。


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