志岐さんと夏目くん
「私と夏目くんってさ、えっと……付き合う、ってことになるわけでしょ?」
「うん、付き合いましょう。 よろしくお願いします」
「はい、こちらこそ。 って、律儀にやり取りしてる場合じゃなくて……私と夏目くんが付き合うことに、納得しない人がいっぱい出てくるんじゃないかな?」
私が夏目くんの「彼女のフリ」をしていた、というのは周知の事実だ。
それなのに、いつの間にか本当の彼女に……って、それを知られた時の周りの反応が怖い。
と思ってる私に、夏目くんが笑う。
「別に悪いことをしてるわけじゃないしさ、何か言われても堂々としてればいいよ」
「……それは、そうかもしれないけど……」
「大丈夫だって」
ギュ、と体を抱きしめられる。
そのあとに、夏目くんがまた微笑んだ。
「他の奴の言葉なんてどうだっていいよ。 誰に何を言われたって俺の気持ちは変わらないし、志岐さんだってそうでしょ?」
「まぁ……確かに……」
「うん、絶対に大丈夫だよ。 だから行こう」
立ち上がった夏目くんに手を引かれ、私も立ち上がる。