志岐さんと夏目くん


繋いでた手を離し……夏目くんは私に背中を向けた。



「もしもし、俺だけど。 ……あ、鳴沢? うん、うん……あー、はい、了解。 ありがとう、すぐ行くよ」



短いやり取りを終え、電話を切ったあと……夏目くんは深く深く息を吐き出した。

それから、髪の毛をグシャグシャッとしながら私を見た。



「えーっとですね、教室に近藤と山口が来たらしいです」

「あぁ……それで連絡が来たんだね」

「うん、アイツらが来たら梶くんの電話から連絡。 っていうのを男子の間で決めてたんだ。 だから覚悟はしてたけど、ちょーっと面倒な感じみたい」



歩き出した夏目くんの隣に、私も並ぶ。

手は離れたままだったけど、それよりも今は話を聞く方が大切だ。



「面倒、って?」

「んー……流れを説明すると、最初に佐々木さんと平山さんがウチでお茶してたっぽいんだ。 で、そこにアホ二人が現れましたとさ」

「あぁ、それは確かに面倒臭いかも……」



佐々木さんと平山さん、楽しむためにメイド喫茶に来てただろうに……。

男子二人は、彼女たちに接触したくて学園祭に出向いてきたのかな?

それとも会ったのは偶然?


< 94 / 133 >

この作品をシェア

pagetop