誰を?何を?見ているの?

☆☆前だけを見つめて


兄貴の家で久しぶりに
ゆっくり眠れた俺は
兄貴の部屋においてあるスーツで
そのまま出勤した。

兄貴が作ってくれた朝食を食べて
兄貴にお礼を言った。

兄貴は、
「来たときよりは、まともな顔になった。」
と、言っていた。
心配かけてばかりで
申し訳ない。
「どんな結果がでても俺は、
俺の今を信じて頑張るよ。」
と、言うと
兄貴は、頷いてくれた。

俺は、気持ち穏やかに病院へと向かった。

病院に着き仕事に追われていると
凪からピッチが····
「薫?」
「はい。どうした?」
「彩葉が、倒れた。」
俺は、事務長に席を外す事を
伝えて事務室を後にした。

凪から言われた治療室に向かうと
彩葉のベッド脇に青山君が
心配そうに立っていた。

ああ、彼が彩葉を運んでくれたんだ
と、わかった。
なんとも言えない気持ちが沸くが、
彩葉を思っての事だと思う。

診察をしてくれた内科の先生が
院長に
「風邪ですね。
あまり、食べてない、
眠れてなかったのでは?
過労もありますから肺炎に
ならないように
二、三日、大事をとって入院を
お願いします。」と。
院長は、
「お願いします。」
と、言って病棟の手配をする。

院長も内科だが
身内のため、他の先生に
お願いしたようだ。

彩葉は、赤い顔をして
眼を閉じている。

眠っているのか
ただ、眼を閉じているのか
わからない。

病棟が決まり移動の時に
院長が俺をとらえて
「自分の婚約者だろ?
人に位置を譲るのか?」
と、ニヤケながら言うと
「院長。
止めて下さい。
薫は、何も悪くない。
冗談でもきついですよ。」
と、俺の横にできた影····凪だ。
「すまん。
だが、凪からずいぶん好かれたな
風間君。」
と、言われて
「「えっ?ん?」」
と、凪と二人して····
「連絡ありがとう。」
と、俺が凪に言うと
凪は、頭を横に振り
「ついて上がれ。」
と、言うから
いいのだろうか?
と、思い
院長と凪、青山君を見る。

院長は、頷き
凪は、顎を動かす

彩葉は、目が覚めた時に
青山君がいた方が
喜ぶのではないか·····と。

すると
「私も一緒に良いですか?」
と、青山君が院長と俺を見ていた。

俺は、何も言わなかった
いや、言えなかったが·····
院長は、
「仕事の方は大丈夫ですか?」
と、言っていた。

六階の内科病棟の特別室へと
彩葉は、移動となった。
事務長に連絡をし
簡単に経緯を話してから
一緒に上がった。

青山君も、黙ったまま
着いてきた。

凪は、彩葉のベッドの後ろを
俺と青山君がついて行くのを
ため息をついて見ていた。
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