君に捧げる一途な愛

「伝票を持ってきたの。比嘉部長は……」

そう言って周りを見回す。

「今、ちょっと席を外してるわよ」

「そっか。じゃあ、小笠原課長に渡しておこうかな」

「課長ならあそこにいるよ。険しい顔してパソコン入力してるでしょ」

小笠原課長の席の方に向かって顎をしゃくり、私の耳元で囁いた。
その態度に思わず眉間にシワを寄せた。

見られていないからって、上司を顎でしゃくるなんて驚きだ。
こういうことをやらなければ、博美はいい子なんだけどなぁ。
性格的に小笠原課長と合わないってことなのかもしれない。

「ありがとう。あと、口ばかり動かすんじゃなくて真面目に仕事しなよ」

私は博美の肩をポンと叩き、小笠原課長の席に向かう。

「お疲れさまです。物流部の比嘉に頼まれた伝票を持ってきました。部長がいらっしゃらないみたいなので受け取ってもらえますか?」

私が声をかけると、小笠原課長はカタカタとキーボードを叩いていた手を止め、顔を上げた。
キリっとした切れ長の目と視線が合い、ドキッとした。

艶やかな黒髪は後ろになでつけ、輪郭はシャープで鼻筋の通った端正な顔立ちをしている。
クールな印象を受け、大人の男の人という感じだ。
背丈も高く、学生時代はなにかスポーツをしていたであろう身体つき。

私の中では、小笠原課長は控えめでも存在感のある男性という認識だ。
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