君に捧げる一途な愛
「ほら、やっぱり迷惑をかけているんじゃない」
「えぇー、志乃りん酷いよー。俺と志乃りんの仲なのに」
裏切られたと言わんばかりに眉尻を下げる。
いや、いったいどんな仲よと突っ込みたくなった。
「智美、なにをやっているんだ?」
声のした方を向くと、比嘉部長がこちらに歩いてきた。
しかも、隣には小笠原課長の姿がある。
「なにもしていないわよ。後輩たちと話をしていただけ」
「そうか」
比嘉部長が合田くんの方に視線を向けると、ビクッと身体を震わせていた。
え、なにその反応?
比嘉部長は体格がいいのでヒョロっとしている合田くんにとっては迫力があるのかもしれない。
「ひ、比嘉さん、志乃りん、お先に失礼します」
合田くんは私たちに軽く頭を下げた後、小走りで駐車場へと向かっていった。
「志乃りん……?」
怪訝そうな顔で小笠原課長の口がそう動いた。
「おい、政宗。お前、なんて顔をしているんだ」
比嘉部長がケラケラと笑いだす。
「別に普通の顔ですけど」
「どこがだよ。そんなしかめっ面して」
「俺はいつもこんな顔です。それよりいいんですか?啓介のお迎えの時間でしょ」
「あー、そうだった。智美、行こうか」
比嘉部長は腕時計を確認して智美さんに声をかけた後、私を見た。
「志乃ちゃん、せっかくだから政宗に送ってもらって」
「いえ、電車で帰るので大丈夫です」
私は比嘉部長の言葉に首を振って断った。
本当は一緒に帰りたい気持ちはある。
だけど、こんなに堂々と会社帰りに車で送ってもらうのは迷惑になりそうだ。
そんなことを考えていたら智美さんが耳打ちしてきた。