君に捧げる一途な愛
「志乃ちゃん、大丈夫よ。私も付き合う前に大ちゃんに送ってもらったことがあるし、先輩が後輩を送るなんてよくあるでしょ。もし、誰かに聞かれても、先輩夫婦に頼まれて送ってもらうことになったって言えばいいし。それに、こんな状態で小笠原さんが志乃ちゃんを一人で帰らせないと思うわよ」
「それってどういうことですか?」
「ふふ、あの表情を見たらわかるでしょ。それじゃあ、志乃ちゃんのことお願いします」
智美さんはコソコソと話した後、小笠原課長に向かって私の背中をそっと押す。
「あっ、言い忘れていたけど今月末、うちと経理部で飲み会する予定だから」
「そうなんですか?」
「うん。懇親会という名の他部署との飲み会は何回かあったでしょ。で、今回は経理部とになったから予定に入れておいてね。志乃ちゃん、また明日」
智美さんは比嘉部長と並んで駐車場に向かった。
「木下さん、俺らも帰ろうか」
そう言った小笠原課長は、特に周りを気にすることなく歩き出す。
私はひとり、大丈夫かなとソワソワしながら歩いていた。
駐車場に着き、車に乗り込んだ。
シートベルトを締めると、隣でハンドルを握る小笠原課長を見る。
キッチリとスーツを着て髪の毛も整えられている。
この前、小笠原課長の家に泊まった時に見た洗いざらしの姿とは全然違う。
スーツ姿もかっこいいけど、ナチュラルな小笠原課長も素敵だ、なんて思っていたらチラリと視線を向けてきた。
「さっきの男、いつもあの呼び方なのか?」
不意にそんなことを言われ、キョトンとしてしまった。