君に捧げる一途な愛
「あー、確かにそういう相談は受けていたけど、俺は以前から遠藤さんのことは注意していたから、それがという訳ではないよ。今日は志乃の名前が聞こえたので完全に個人的な感情で注意してしまった。上司としては失格だな」
小笠原課長は気まずそうな顔をした。
小笠原課長が私の名前を聞いて個人的な感情で注意した、なんて言われたら不謹慎だけど顔がにやけてしまう。
恋愛経験の少なさが故に、些細なことが気になっていた。
朝倉さんが小笠原課長のことを好きだと決まったわけではないのに、勝手に意識して気を揉んでいた。
朝倉さんへのモヤモヤした気持ちをずっと抱えていたので、小笠原課長の言葉で安心感を得たかったんだ。
「朝倉さんの件だが、これ以上遠藤さんが迷惑をかけるようなら、比嘉部長も席を替えようという話をしている」
「そうなんですね」
うちは自由に席を選べるフリーアドレスのオフィスではなく、席は固定だから席替えは妥当な対策だと思う。
「遠藤さんも仕事さえ、ちゃんとしてくれれば問題はないんだけどな」
朝倉さんにあそこまで言われたら、博美もむやみやたらに話しかけたりしないよね。
これで少しは小笠原課長の心労も少なくなるだろう。
「それはそうと、さっきから思っていたんだが、今はプライベートだよな」
ちょうど信号が赤になると車がゆっくりと止まり、小笠原課長が横目で視線を送ってきた。