君に捧げる一途な愛
会社を出たらプライベートではある。
いったいなにが言いたいのか分からず戸惑った。
「俺はプライベートで役職で呼ばれるのは嫌だと言ったと思うけど、もしかしてもう忘れた?」
少し不機嫌そうな表情になっている。
あっ、そうだった。
「いえ、忘れてません」
なかなか自分の中で切り替えが上手くできなくて、普通に役職つきで名前を呼んでいた。
「ま、政宗さん」
名前で呼べば小笠原課長は柔らかく笑い、ハンドルから片手を離して私の手を掴んで自分の口許へと持っていく。
そして、私の手の甲へ唇を寄せ、チュッと音を立ててキスをした。
「っ!」
こんな不意打ちは心臓に悪い。
突然のことに真っ赤になっている私を見て、小笠原課長は満足そうに笑っていた。
「そういえば、今度経理部と物流部で飲み会があるんですね」
「そうみたいだな。志乃、分かっていると思うが、絶対に飲みすぎるなよ」
「はい、もちろんです」
お酒の失敗はこりごりだ。
記憶を無くすなんてもうやりたくない。
「それと確認なんだが、志乃は街コンなんかにいかないよな?」
政宗さんは真顔で聞いてきた。
博美の言ったことを本気で気にしていたんだろうか。
「行きませんよ。私には政宗さんという素敵な彼氏がいますから」
私はキッパリと否定した。
彼氏がいるのに行くわけがない。
というか、そもそも合コンとかそういう類のものは苦手だ。